『フクロウが来た』 できたあ

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ぽーとの暮らしを書いた『フクロウが来た』ができあがりました。心なしか、ぽーも自慢げであります。楽しく読んでいただけたら嬉しいです。筑摩書房より、定価1600円。

さて、この本の一部から……

 

【フリーフライトをさせるか、させないか】

ぽーを野外で飛ばせること、それは最初からのあこがれであったけれども、フリーフライトの訓練についていろいろ知るようになると、簡単には飛びつけなかった。餌の量を加減して、体重を安全に十パーセント落とすことなど、かなりの決断がいる。それを実行したとしても、野外でのフライトにはいくつもの危険がある。急な風、野生の猛禽との遭遇、大きな物音などで起きるパニック、その他、予想もつかない何かのせいで、放った鳥がロストとなったり、怪我をしたりすることはあり得る。

それでもやっぱり、野外でのびのびと飛ばせてやりたい気持ちは大きい。ぽーが木々をかすめるようにしてぐんぐんと高く飛び、大きな弧を描いて私の腕に降りたってくれたら、それは胸がすくような体験だろう。

リトルズーの仲間にその迷いを言うと、二通りの意見が戻ってくる。

「やってみればいいよ。大丈夫だよ、きっと。なにしろフリーフライトは気持ちいいからねえ。」

「鷹と違って、野生でもフクロウはそんなにいつも飛び回って生活しているわけじゃないんだから、無理することないよ。特に家の中がすっかりテリトリーになっているんだったら、それで十分だよ。」

確かにぽーは、自由にさせている時でも、気に入った場所に陣取ってじっとしている時間が圧倒的に長い。体つきから言っても、フクロウにとっては飛ぶことはある程度の負担のあることなのだろう。餌が足りている限り、無駄に飛び回ったりしないのはそれもあるだろう。テリトリーから出たがるようすもない。玄関のドアや庭に出る窓をすり抜けて外へ出ようとしたことは、(こちらが気をつけているからでもあるが)これまで一度もない。テリトリーの外を恐れる気持ちがあるのかもしれない。

フリーフライトをさせるか、させないか。その決断をする「けじめ」に、私は上野動物園に出かけた。動物園の大きなケージで飼育のプロに見守られて暮らすフクロウが、どれほど飛ぶか、飛ばないか、確かめておきたかったのだ。

ぽーの主なテリトリーである我が家のリビングと比べても、上野のウラルフクロウのケージはそれほど大きくなかった。ぽーは、幸せと思わなければいけないだろう。意気込んで動物園に乗り込んだ私は、長期戦を覚悟してケージの前に陣取り、二羽のウラルフクロウを眺めはじめた。メモ帳と鉛筆を用意しているが、書き留めるほどのことも起きない。注意力を維持するのが難しいほど、彼らは動かなかった。寝たり起きたりを繰り返しているが、同じ場所にじいっとしている。たまに体をぶるぶるっとふるわせたり、伸びをしたりするのはぽーと同じだ。目を離した隙に動くかもしれないから、とにかく見続けたが、ちっとも動かないので、じきに飽きてしまった。観察の大敵は、退屈とやぶ蚊と、それから飼育員のいぶかしげな目だった。

結局、三時間と十二分、見守ったけれども、ウラルフクロウは動かなかった。途中、飼育員が餌のマウスを置きに来た時、一瞬、ばたばたっと羽ばたいたけれども、それだけだった。動物園が閉園の時間になって、追い出された。

手厳しい友人は、もっと長時間観察しないと本当の結論は出せないんじゃないか、と意地悪を言うが、三時間十二分だって大変だったのだから、もういいことにしよう。

結論。フクロウはかなりじっとしている生き物だ。じっとしているのが、苦ではないらしい。テリトリーがある程度の広さに確保できているぽーは、それで満足していると考えていいだろう。フリーフライトは、少なくとも当面は考えないことにした。

 

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