うんちとの闘い 2

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ある日、娘に留守番を頼んで外出したら、携帯電話が鳴った。家からだ。何気なく出ると、

「おかあさんっ!」

という娘の声が聞こえてきたが、それはかなりまずい調子の「おかあさんっ」だった。こういう切実な声で娘が「おかあさんっ」と言ったら、第一級の警戒警報発令だ。

「どうした?」

「ぽーちゃんが、カーテンレールの上でうんちをしちゃって!」

「へえ、珍しい。一度もレールではしたことがないのになあ。いいよ、おかあさんが帰ってから始末するから、そのままにしておいて」

カーテンレールであれ、どこであれ、うんちのことでこんな声を出すようでは、娘もまだまだ未熟者だなあ、と私は少しがっかりした。すると、私の声にかぶせるように、娘の余裕のない声が響いてきた。

「違うの! うんちが、たぶんテレビの後ろのコンセントに垂れて、それでなんか、ジイジイって音がする! たぶんショートしてるんだと思う! ああ、なんだか焦げ臭いにおいもする! どうしよう!」

「テレビのコンセントって、テレビ台の奥にあるよね。そこが見えてる?」

「ぎりぎり見えない。隙間が狭くて手も入れられないから、テレビ台を動かそうとしたけど、重すぎて、ぜんぜん動かないの。どうしよう! 火事になる! まだジイジイいい続けてる!」

口が乾いてきた。どうする?

「……そうだ、電源を落とそう。ブレーカーって知ってるよね? 洗面所のドアの上にずらっとスイッチがならんでいるの。すぐに行って、居間と書いてあるブレーカーだけ、切ってきて。さ、今すぐやって! 高いところにあるから椅子をもっていくんだよ!」

携帯電話の向こうから、どたばたと駆け回る音が聞こえ、やがて静かになった。

「おかあさん、終わった。」

「ブレーカー落として、変化あった?」

「うん、もう音もしない。焦げ臭いけど、さっきほどじゃないし。」

「ああ、よかった。」

「死ぬほど焦った……」

娘がパニックを起こしてテレビ台と格闘していた間、ぽーは、真上のカーテンレールに止まったまま、実に興味深そうに下を見降ろし、ジイジイと鳴っている音源を探し、娘の動きを観察していたという……

 

 

『フクロウが来た ―ぽーのいる暮らし―』(筑摩書房)の発売日が4月22日に決まりました!

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