うんちとの闘い1

自然なフクロウ育てを目指す私の奮闘は、何より糞との闘いだった。きれいごとではすまなかった。

粟や稗のような乾いた餌を食べる小鳥たちは、体に似合う小さな糞をして、その始末もそれほど大変なことではない場合も多い。けれども、ぽーは猛禽類で肉を餌とし、体も大きい。排泄物はそれなりの量があり水気も多い。尿は水分のほかにも白いトロリとした状態で出て、糞は黒くて柔らかい。排泄後、すぐにトイレットペーパーでふき取り、あとをウエットティッシュできれいにすればいいのだが、ふき取るのが遅れると、床にこびりついて乾き、白いしみが残る。例の臭い盲腸糞も一日一度はする。

その上、ひんぱんに糞をする。ついさっき掃除したばかりなのに、またする。リビングのあちこちにカバーをかけたり、古新聞で覆ったりしたが、布のカバーは汚れを落とすのが容易ではなくて、あまりいい方法ではなかった。落としきれない汚れが残っていると、かえって汚らしく見える。それから、古新聞を部屋中に広げてみたら、ばかばかしいほど落ち着かない気分になって、それもすぐにやめた。

腹を据えてまずは観察に努めた。時計を見ながら間隔をつかもうと考えたけれども、ちっとも一定ではなくて、あまり信用できる情報は得られなかった。まあ30分おきというのが平均的なところだろう。糞をする場所も、行き当たりばったりだ。犬猫のように、「ここがトイレよ」としつけることは、どうもできないようだ。

それでも、ぽーの動きをじっと見ているうちに、排泄の直前に後ずさりすることがわかった。すり足で、しずしずと15センチほども後ろへ下がる。重心の低い前かがみのその姿は、狂言役者のようでもある。納得した場所で止まると、脚をくいっと内股にして力をこめ、お尻を斜めに突き出して、糞をする。この排泄の前の後ずさりは、糞を巣の外に落とすためかと思ったけれども、巣穴の形状を考えるとそれはちょっと合わない。とりあえず今いる場所を汚すまい、ということなのだろうか。

餌を買いにリトルズーに行った折、ミワさんにその発見を告げると、

「そうなの、そうなの、後ずさりでわかるの。中にはどういうわけか、ずうっと、1メートル近く後ずさりする子もいて、『もうその辺でいいんじゃないの』って言いたくなるくらい。」

とベテランの笑みを浮かべた。

「そういうふうに後ずさりの長い子だと、あ、うんちするな、って気づくだけの時間があるわけだから、ぱっと古新聞とかティッシュとかを広げて、受け止める人もいるって聞いたよ。」

これはいいアイデアだ。ぽーはせいぜい15センチくらいしか後ずさりをしないが、そこに2~3秒の時間が生まれる。さっそく100円均一の店に行って親子丼用の鍋を買い、取っ手の角度をうまく調節して、「うんちキャッチャー」を作った。すぐ手のとどくところにその鍋を置いてぽーの動きに目を光らせ、あ、後ずさり、と気づいた瞬間に取っ手をつかみ、後ろからお尻の下に差し出せばいい。宮本武蔵ばりの早業が必要だが。

最初の一回は、私のあまりの迫力にぽーがすっかり驚いてしまって、確かに後ずさりしたのに、うんちも忘れてすたこらと逃げていってしまった。これに反省し、静かに素早く動くことを心がける。その結果、初めて成功した時は非常にうれしかった。鍋を拭って、トイレで洗い、いっちょ上がりである。たいへん清潔な対処法だ。

けれども、私もそんなに暇ではない。一日中そばで眺めていてぽーの後ずさりの瞬間を待つなどということができるわけもなく、このキャッチャーは結局3回しか使わなかった。3回成功した段階で、満足なのか諦めなのか、よくわからないけれども私の気がすんで、糞は気づいたら掃除する、というごく平凡なやり方でいくしかないという結論に達した。親子丼の鍋は燃えないゴミの日に出した。生産者の方には申し訳ない使い方であった。

 

次回は「うんちとの闘い 2」! お楽しみに。

IMG_3973 (002)

2013年春に生まれ、我が家にやってきたウラルモリフクロウのぽーをめぐるあれこれ。この4月に筑摩書房より『フクロウが来た ぽーのいる暮らし』が出版となります。どうぞよろしく。

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中